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幼馴みのYは猫を飼っていました。 私は、その猫が子猫の頃から毎日彼の家に顔を出していました。 おかげで、その猫は私にとてもなついていました。 家の前で「Y君!」と呼ぶと、彼より先に飛んできて、玄関の所で待っていたぐらいでした。 Yもその猫を、とても可愛がってはいましたが、抜けた毛が飛ぶからと、自分の部屋にだけは、絶対に入れないようにしてました。 中学2年の夏、私がYの家に泊まりに行った時の事でした。 時計も12時を回り、そろそろ寝ることになりました。 猫は、私と一緒に寝たいらしく、居間から私にピッタリくっついてきましたが、Yが「猫は部屋に入れちゃ駄目!」と言ったため、私は猫にその事を話し、猫を部屋に残したまま渋々ドアを閉めました。 猫は少し悲しそうに「ナァー」と鳴き、首輪の鈴の音と共に居間のある方へ行ってしまいました。 (ドアを空けていないので音だけの確認でしたが・・・) 私達は、蛍光灯を消し、夜間灯だけを点けて寝ました。 私は夢を見ました…。 始めのうちは楽しい夢でした。 が、急に夢の感じが悪い雰囲気へと変わりました。 「やばい!金縛りが始まる!」 と私は感じました(私の金縛りは夢の感じが急に悪くなると始まるのです)。 慌てて眼をさますと、既に体は全然動きません。 しかも今回は目すら開きません! そのうち、耳の両側から沢山の子供達が歌う声が聞こえてきました。 それは、同じフレーズを繰り返し、繰り返し歌っていました。 「なんとか金縛りを解かないと…」 私は、一旦体の力を抜き、一気にガバッと起き上がりました。 拍子に金縛りが解け、安心したのもつかの間でした。 私の耳もとでは、まだ子供達の歌声が止んでいないのです。 恐怖にかられ、私はYを起そうと試みるのですが、声が出てこないのです! パニックに陥った私はYをバンバン叩いて起そうとしましたが、Yはピクリとも反応しないのです。 そんな時、ふと後ろから何かの視線を感じました。 恐る恐る振り返るとそこには、あの猫がじっと座って私を見ていました。 私が猫と目をあわせた瞬間、あれほど耳元で聞こえていたはずの子供達の歌声はピタッ!と止み、声も出せるようになりました。 落ち着いた私は、こっそり猫を呼ぶと、布団の中に招き入れ緒に寝ました。 朝、目覚めた私の布団の中で気持ちよさそうに猫が寝ていました。 その時私には、昨夜に起こったあの恐怖の瞬間と、この猫に対する疑問が巡っていました。 この猫は、いったい何処から部屋に入ったのだろうか? あの出来事は、猫がやらかしたことなのか? それともこの猫が助けてくれたのか? と…。 私は、今でも後者の方であったと信じたいのですが…。 <余談> それから数ヶ月後、その猫は車に轢かれて死んでしまいました。 轢かれて動かなくなった下半身を引きずりながら、100m程離れた、Yの家の玄関前まで帰ってきていたそうです。道路には血の跡が残っていました。 よぽど家に帰りたかったのでしょう…。 本当に可愛い猫だったので、今でも思い出すと涙が出そうになります。 投稿者:COZYさん |
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