それは、まず私の友達のAさんから聞いた。
「私は霊感ゼロなんだけどさ、何年か前に
池袋の『S出版』にBちゃんと入稿しに行った時に見ちゃったんだ…。
徹夜明けにS出版で必死に面付をしてたら、どうも目の端にチラチラ子供の姿が見えるの…で、振り返ってハッキリ見ようとすると、そこには誰もいないのよ。
あんまり気味が悪いからBちゃんにおそるおそる聞いたんだけど、
『そんなの気のせいよ…。何も感じないわよ。』
っていうし、きっと徹夜明けだったから寝ぼけたなって思ったの。
ところがその帰り道、Bちゃんが
『…あんたがあそこで下手に騒いでついてきたらいけないと思って言わなかったけど、
あそこの印刷屋には子供(の霊)が2人、いるんだよ。あたしも以前入稿帰りについてこられたことあってさ。どうしようと思ったんだけど公園の脇通った時、公園に別の子供の霊がいたんで、そっちいっちゃってさ。よかったよ。』
だって。ゾーッ。
私は電話でこの話を聞き、その夜怖さのあまり電気をつけたまま寝た。

         ×   ×   ×
後日、私がCさんと電話でオバケの話をしていたところ、Cさんが
「あたしさー、どうやら霊に嫌われる体質なんだって。

巫女の家系の子に言われたことあるんだ。
(いわく、現実主義、割切りが早く誰にでも好かれる明るい性格なのだそうだ)
でもさあ、一回だけそれっぽいの見たことあんだよー。」
などと言いだした。
その話とは…

「前に入稿に行ったとき、もう夜の12時を回ってたんじゃないかな。
そうしたらさ、何か階段の踊り場あたりで
子供が2、3人チラチラ見えるの
初めは近所の子供かなと思ったんだけど、時間が時間じゃない…。
だから印刷屋にも確かめられなかったけど…。やっぱり、それって錯覚だよね。アハハー。」
こいつも徹夜続きだった。
「…それってどこの印刷屋?。」
「S出版。」
「……。」
CさんはS出版の子供の霊の話なんか全然知らなかったそうで、
私がAちゃんの話を聞かせてあげると、
「も〜っ。錯覚だって信じていたかったのに〜。」
と泣いた…………。
         *   *   *
池袋にあった『S出版』は、Aちゃんが『子供たち』見たあとしばらくして移転したそうだが、Bちゃんの話によるとその後も『子供たち』は移転したS出版にいたそうで、 どうやら『子供たち』は建物にではなく、S出版そのものに憑いているらしいとの事だった。

ちなみに私も、移転前の『S出版』には何度か入稿に行ったことがあるのだ…。