これは、3年程前の話です。
当時、某駅前にあるビルを倉庫として使用していました。
この倉庫は玄関で靴を脱いで中に入るタイプの物で、各部屋の中にはパンチカーペットが敷いてありました。

ある日、私は倉庫の3階でダンボール箱に入った商品を整理していました。
箱の中に体を屈み込ませてやっていたのですが、エレベーターが上がってきて扉が開き、誰かが私の方に向かって歩いてきました。
足音は私の背後で止まりました。
私はてっきり、同僚の一人が来たものと思い、背後に向かって、
「なーに?」
と聞いたのですが、返事がありません。
「?」と思い、後ろを振りかえったのですが、誰もいませんでした。
そのときは「気のせいかな?」と思って済ますことにしました。

それから幾日かたち、そんなことも忘れた頃でした。
前述の通り、部屋の中にはカーペットが敷いてあるので、極端な話寝っ転がっても平気だったので、居眠りをしていました。
気がつくと、足音が近づいてきて、誰かが顔を覗きこんでいる気配がしました。
先日のことがあったので、もしかしたらと思ったのですが、目を開けてみると又しても誰もいませんでした。さすがに薄気味悪くなり、さも、仕事をしてきたと言う顔をして会社に戻りました。

やがて、このビルは競売に掛けられることになり、私達はこのビルから撤退し、
後にはある出版会社が入りました。



投稿者:老月(ラオユェ)さん