これは、友達の話です。
その日は、雨が降っていました。
私の友達 Y と K は、交通量の多い道路の向う側へ渡ろうと横断歩道で信号待ちをしていました。
車は相変わらず大きな音を立てながら行き来しています。ふと横断歩道の向こう側を見ると、いつしか独り男が立っていました。
「…?」
「なぁ、向こう側に立ッとる人なんか変じゃない?」
Y は、K に言いました。
「…そう? そんなことないじゃろぅ。」
と、K はちゃんと聞いてくれません。

…やがて信号が青に変わり、横断歩道を2人は渡り始めました。
向こうからは男がこちらへ向かって同じく横断歩道を歩いてきます。
男が彼等とすれ違った瞬間、
「……ヨ・ウ・ワ・カ・ッ・タ・ナ・ァ…」
男の声がしました…。
「!」
Y は、慌てて後ろを振り返りましたが、たった今すれ違った男どころか、そこには誰もいなかったそうです。

あの男は、一体なんだったのでしょう。



投稿者:松岡さん