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これは、私が一人暮しをしていた高校時代のお話です。 当時私は、ある有名な古刹の隣に建てられた、一軒長屋のアパートに住んでいました。 それだけ聞くと、お寺の隣なんてと思われてしまうかもしれませんが、確かに不可解な事はあったものの、慣れてしまえば――住めば都、というように結構快適に暮していました。 そのアパートに住むようになって半年が過ぎた頃、ちょうど季節は冬でした。 いつものように学校から帰宅すると、部屋の中はムッとするようなお線香の薫りが充満していました。 私は別にアロマに興味があるわけではないので、部屋でお香を焚く事はありません。 もちろん、外気が入るような窓が空いている訳でもありません。 こう言ってはなんなのですが、新仏さんがお隣<アパートの隣はまさに墓地>に越して来ると、必ずお線香の香りがするんです。 それはほぼ100%の的中率でした。 でも、その日は特に匂いが酷く、窓を開けて空気の入れ替えをしなければならないほどでした。 それでもいつもの事と、特に気にする事もなく夕食をすませ、休む事にしました。 が、どういう訳がこの日に限って寝付けないのです。 何がどう、という訳ではないのですが、特に家の奥に位置するトイレのあたりが、鳥肌が立つほど怖く、さすがに気持ち悪くなったので、トイレの入り口に盛り塩をしました。 その夜、家の周囲を歩き回る人や、ドアをノックする人などもいましたが、全て無視して寝てしまいました・・・ が、本当に怖かったのは、翌朝トイレのドアを開けた時、盛り塩が水になっていた事です。 その地域は、その日の朝、霜が降りるほど寒かったのにもかかわらず、です。 原因はその翌日、並べられた花輪で判明しました。 どうやら、越して来た人は『自殺』した方で、かなり悲観された死だったようです。 今にして思えば、塩で結界などせずに、きちんと話を聞いてあげるべきだったのか、という気がしています。 でも、やはり崩れちゃっているタイプは嫌ですので、仕方ない事なのかも知れません。 投稿者:寝子さん |
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