今から六年ほど前、私が小学六年生の頃の話です。
小学校は茨城県T町にあり、当時でも百年以上経っていた程の古い学校でした。
私はミニバスケットクラブに所属していて、試合が近いために遅くまで練習していました。

その日も練習が終わると、友人と体育館の外に出ておしゃべりをしていました。
体育館は旧校舎の前にあり、夜は真っ暗で気味が悪い感じになります。
そんな旧校舎を見上げて何となく恐い話しになりました。
一人の友人が言いました。
『ねえ、この学校って出るんでしょ?』
今までも色々な幽霊話があったので、
『あーそうらしいね・・・。でも、どこの学校でも大体あるんじゃない・・・?』
そう私が言って校舎の二階の一番左奥の窓のあたりをふと見ると、白っぽいボヤーっとしたものがありました。
『?』
と思い、じっと見ていると、その白いものはゆっくりと右方向へ進んでいきます。
私の異変に気づいた友人も、私の視線の先を追い、それが分かったようでした。
私たちは黙ってその物体の動きを凝視していました。
白い物体は真ん中の辺りに来ると動きを止め、だんだんと人のような形になってきました。そして
白い半袖シャツを着た少年になったのです。
こちらからは、上半身しか見えませんでしたが、その少年は横を向いたままで立っていました。
友人がポツリと
『何・・・?』
とつぶやいたとき、少年はゆっくりとこちらを向きました。
周りは真っ暗だったのに、私たちにはなぜかよく見えたのです。
その少年の顔は何もありませんでした。
いや、ただ一つだけありました。
真っ赤な大きな口が、こちらの方を向いて笑っていました。
私たちはまるで金縛りにあったかのように動けず、声が出ませんでした。
何十分たったのか、それともたった何秒間であったのか、その少年がこちらを向いて
笑ったまま消えてしまった後も、私たちはただ立ち尽くしているだけでした。

後から遅れて出てきた友人たちに声をかけられて、
私たち二人はやっと我に返ることが出来ました。
少年がいったいなぜあの小学校に憑いているのかは分かりません。
でも古い学校のことですから、過去に色々な出来事があったのでしょう。
ちなみにあの少年は、私たちが目撃した前にも
何人かの先生や用務員さんが目撃していたそうです。

今でも彼は、学校をさまよっているのでしょうか。




投稿者:AI さん