パリでカタコンベ(地下墓地)に行った。
カタコンベは地の底十数メートル、約600メートルにわたって数万、いや、十数万体の白骨が納められているところだ。
古いものはフランス革命以前のものからある。
白骨といっても古いものは茶褐色に変色し、それが整然と並んだ大腿骨の中にバランスよく頭蓋骨が配置されてたりしてそれなりにフランスしている。
でも骨は骨だ。柵もなく、狭いところでは幅1メートルもない道がくねくねと一方通行に続いている。
我々の他は2、3人の客がいるだけで本当に不気味であった。
とりわけ霊的なものに好かれる私はびくびくしていたのだが、あまりの骨の多さに圧倒されていて、もう怖いを通りこしてしまっていた。
(怖さも慣れてしまうとどうってことはなくなるのだ)

いきなり、頭のすぐ上を何かがかすめ飛んで、あわてた私はよけようとしてよろけた。
前を歩く連れはどんどん先へ行く。

もちろん回りは誰もいないし、左右は天井近くまでぎっしりと骨。
1メートルの幅の通路を、いったい何が頭をかすめて飛んだのか、ちょっとドキドキしたけど、いつものことなので黙っていた。

旅行後、しばらくして連れの友人に、この事を話すと絶句した。(…するよ・S木)
「頭をかすめて飛んだって…ねずみ?。」
「もっと大きかった。ぶつかる、と思ってよけようとしたくらいだから…。」
「あんた…あんなとこ何がいるっていうの。それって
死食鬼(グール)じゃないの?。」
「……。」


 だから、ああいうところは嫌なんだ…。