あれは今から15年前くらいのことだったと思います。
私はまだ小学生で、近所の引っ越してきたばかりの友人Hちゃんと彼女の家でよく遊んでいました。
彼女の家は新築の一戸建てで、大きな家だったので、小学生の私たちの遊ぶ場所としては十分な場所だったのです。

彼女の話によると、彼女とお母さんはよく「この世のものではないもの」を見るそうで、引越してくる前の家がそういう点で住みにくかった為、この家へと引越してきたとの事でした。

しかし、この新しい家で「かくれんぼ」をする時、彼女はいつも、
「お風呂場はなしね…。」
と言うのです。
その頃の私は、あまり気にはしていなかったのですが、ある時何気なく
「どうしてお風呂場はダメなの?」
と彼女に聞くと、
「あそこはね、一人で入るのいやなの・・・」
といったっきり、それ以上は何も話してはくれませんでした…。

Hちゃんの家は、お風呂場の隣にトイレがありましたが、北向きであるというせいもあるのか、その周りはいつも暗い感じで、私もHちゃんちではあまりトイレに行くのもイヤな感じがしていました…。
ある時、私は夏休みということもあって、彼女の家にお泊りすることになりました。

夜10時ぐらいの事でした。
その時Hちゃんのお母さんは、いつも遅く帰宅するお父さんのご飯の仕度に追われていました。
「Hちゃん、ママ今手が離せないから、お風呂沸いてるか見にいって!」
母さんは、Hちゃんに声をかけました。
私と彼女は丁度、面白いTVを見ている最中で、目が離せない状態だったのですが、彼女はTVを気にしながらも私に
「すぐ戻ってくるから!」
と言いながらって、渋々とお風呂場へと向かいました。

「きゃ〜〜〜〜〜〜〜!」

しばらくして、Hちゃんの悲鳴がお風呂場から聞こえてきました。
私と彼女のお母さんはビックリして、お風呂場に向かうと、脱衣所でHちゃんが倒れていたのです。
私は何が何だかわからないまま、ただ呆然としていました。
結局、彼女はそのまま救急車で運ばれ、私は家に帰ることになりました…。

数日後、お見舞いにと再び家を訪れた時、
「どうしたの?何があったの?」
と、私は彼女に聞きました。
「………」
しかし、彼女は首を振るばかりで、何も教えてはくれませんでした。
彼女のお母さんにも聞きましたが、結局お母さんも何も教えてはくれませんでした。
その事件があってか、夏休みが終わる前に、Hちゃん家は引越しをすることになりました。
私たちはとても仲良くしていたので、別れが辛かったのですが・・・・
       ※       ※       ※
その後Hちゃんの家は買い手がつかないまま、しばらく放置されていましたが、
私が中学生になった頃、やっと買い手がついたという話を母から聞きました。
その時母からとんでもない話も一緒に聞いてしまったのでした。
「あの家、やっと買い手がついたみたいだけど・・・・あんなことあってからじゃいやよね〜。」
「えっ?」
「あんたが泊まりに行った日、Hちゃんが脱衣所で倒れたでしょ?覚えてる?
あの後、彼女のお母さんに聞いたんだけど、あの家ね、お風呂場の位置が悪いみたいで、よくお風呂場に幽霊が出たらしいのよ…。」
驚く私を後目に、母は話を続けました。
「あの日、Hちゃん、お風呂場でお湯が沸いているか、浴槽の蓋を開けたら……
お湯一面に、人間の髪の毛が浮いてたそうよ…。
それで、怖くなってHちゃん、脱衣所に逃げようとしたら後ろで、
…ザザザァ……!
って音がしたんだって。
慌てて彼女が振り向くと、お風呂に女が鼻の上くらいまで潜ったまま、
彼女をジッと睨んでたんだって…ギョロっとした眼で……。」
「…!…」
「Hちゃんのお母さんも駆けつけた時、髪の毛は見たらしいけど…。今はもう、噂もほとんどなくなったけど…あの家、どうなることかしらね…。」



今はその家の場所は空き地になっています……。



投稿者:ユカコさん