私が中学二年生のとき、学校行事でY県のS湖に二泊三日でキャンプに行きました。
キャンプ場に着いて皆の心に浮かんだことは、『汚い・・・。』ということでしょう。
バンガローは古く、中もじめじめしていてちょっと嫌でしたが、中学生になってからの初めての宿泊なので、楽しみの方が上回り、対して気にはなりませんでした。
そして消灯時間の後は、小さな懐中電灯の中でお約束の恐い話で盛り上がりました。
12時を過ぎた頃、一人の子が、
『ここのバンガローの部屋番号って43番でしょ?隣りって42番だからなんか恐いよねー。』
などと言っていたその時、隣りのバンガローからガチャーンという音と、悲鳴が上がりました。
皆びっくりして、
『何?今の・・・。』
と動けずにいたとき、先生が私たちのバンガローのドアをノックして、
『ちょっと事故があったから出ないようにな。』
と言い、また去っていきました。
しばらくすると、救急車の音が聞こえ、キャンプ場に入ってきました。
『誰か怪我したのかなあ・・・。』
と(かなり)気になりましたが、外に出ようとすると、
『出ちゃ駄目だ!』
と先生が言うので外の状況が分からないまま朝を迎えました。

起床時間になり、友達と外に出てみると、地面には点々と血の痕が・・・。
隣りのバンガローはガラスが割れ、そこに泊まるはずだった班の子達は違うバンガローに移動していました。

その後、緊急に集会があり、私のクラスの男の子がガラスで両腕の動脈を切ってしまい、
救急車で運ばれ、手術を受けていることを聞きました。
『大変なことになったね・・・。大丈夫かなあ・・・。』
と皆心配していましたが、キャンプはそのまま続行しました。
もちろん私たちは皆全くの偶然の事故だと考えていました。
しかし、キャンプ場の管理人さんと話をしていたとき、色々なことを知ることになりました。
今回のように怪我をしたのは初めてだが、このキャンプ場のバンガローのほとんどのガラスが、何度換えてもすぐに割れてしまうのだそうです。

私たちのバンガローも、上のガラスと下のガラスの模様が違っていました。
そして特にあの42番のバンガローが頻繁に割れるのだと言います。
でも、なぜかこのキャンプ場に、私たちのような学生が宿泊する予定が入ると、そういうことが無くなるのだそうです。
だから、ガラスが割れて怪我することもないだろうと考え、泊めたということです。
幸い怪我をした男の子もなんとか持ち直し(一時は本当に危なかった)、最終日の夜を迎えました。
その夜は肝試し大会で、キャンプ場の中を歩くことになりましたが、大して何事もなく終わり朝を迎え、私たちはキャンプ場をあとにしました。
しかし、帰りのバスの中で、私と何人かの友達で今回の事件や、管理人さんの言ったことを話していたとき、それを一緒に聞いていた男の先生がポツッ言いました。
『そういや、お前たちが昨日肝試しやってた時、俺はキャンプ場の入り口にいたんだよ。そしたらさ、俺の後ろを何か通って行った気がしたから振り向いたら、お前たちと同じジャージを着た男子生徒がキャンプ場を出てずーっと歩いて行くんだよ。いつの間に、と思って「おーい!駄目だよー!」って叫んだら、チラッと振り返って、また歩いて行っちゃったんだよ。追いかけようとしたらふっと消えちゃってさあ。一瞬T(怪我をした生徒)かと思ったんだけど違う感じだったし、…やっぱ幽霊だったのかなあ・・・。』

なぜ頻繁にガラスが割れるのかということや、先生の見た男子生徒のことは分かりません。
でも、S湖の中に村が沈んでいるとか・・・。何か関係があるのでしょうか。
ちなみに、怪我をした彼は今も元気です。
しかし、今回のことで、ガラス恐怖症になってしまったそうです・・・。



投稿者:涼さん