私の通っている大学では毎年自殺者が多く、今年も四月から六月までのたった二ヶ月の間にその数は十人を超えています。
だからかどうかはは分かりませんが、その手の怖い話もたくさんあります。
これからする話は、先輩が体験したものです。

大学の宿舎の近くに、「平砂トンネル」と呼ばれているトンネルがあります。
そこは日中でも薄暗く、じめじめしていて、あまり人気もなく場所です。
当然、カツ上げや、痴漢等も出やすいらしく、ほとんど人が通ることはありませんでした。
(そこで首をつって自殺したひともいるらしいという噂もあるのでなおさらです…)

…その日は、雨がひどく降っていて、雷もなっていました。
先輩は、バイトに行く途中でした。
うっかり遅刻しそうになっていた彼はかなり急いでいました。
「このままでは、バイトに遅れてしまう!」
彼は「平砂トンネル」トンネルの前へとやってきました。
いろいろといわく付きのトンネルですが、かなりの近道だったので、彼は仕方なくそのトンネルを通り始めました。
しかし、女の悲鳴が聞こえるだとか、足音が追っかけてくるとか、嫌な噂を聞いていた彼はMDウォークマンかけながら、ボリュームを大きくして、はや歩きでトンネルの中を歩き出しました。
…トンネルの半分あたりまできた頃、突然、ウォークマンの音に変調が現れました。
今まで何ともなかった音楽が、急に途切れ出したのです。
はや歩きといえど、走っているわけでもないのに、急にMDの音がとぎれだすはずはありません。
それは、音飛びというのではなく、ぶちぶちと切れる様な感じで、MDが次第に止ってゆく感じになったそうです。
彼は恐ろしくなったものの、この状態のMDですら停止させるのも怖く、そのままさらに歩調を早めました。
すると、不意に音が止まりました。
「………………」
再び音が流れ出すまでのほんの1、2秒の間でした。
何か嫌な音が、イヤホンの外側ではなく、内側から聞こえました。
恐怖に耐えられなくなった彼は、ついに出口へ向かって走りだしました。
そして、ようやく外に出られそうになった時、不意に後ろからTシャツの裾がをひっぱられました。
しかし、彼は後ろも振り替えらず、夢中でトンネルを抜けました。
       ※       ※       ※
ようやく、バイト先についた彼は、調子の悪くなったMDを頭から再生してみました。
しかし、トンネルを通っていたときのような異常は出て来ません。
そのうちトンネルを通っていたときに聞いていたときの曲がかかり始めました。
「!」
トンネルの中で聞いていたときの曲だけが、トンネルの中で聞いた時の様に、音がとぎれていました。
そして、途切れた音と音の間には、女の人の悲鳴のような声が入っていたそうです…
彼は、すぐそのMDの中身を消去、捨ててしまったそうです。

「以前、友達と肝試し気分で通ったきは、トンネルを抜けるまで、曲一曲ぶんもない位の時間だったのに、あの日は、早歩きだったにも、かかわらず、たっぷり二曲は聞いたように気がする」
その後、彼は私にそう言いました。




投稿者:三好 さん