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これは私が学生のときの話です。 あの阪神大震災がおこるまえだから6・7年前でしょうか。 当時私はH県A市のアパートに住んでいました。 私が住むアパートのすぐ斜め前には救急指定の病院があり、よく夜中だろうが昼間だろうが救急車がサイレンを鳴らす音が絶えず聞こえていたものでした。 当時、家から1時間以上もかかる専門学校に通っていた私は、課題のレポートをすませ、早々に床に入りました。翌朝、アパートを7時過ぎには出なければならないので、遅くとも11時には寝むってしまいたいところです。 ところがその日に限って、疲れているのになかなか寝付けません。 ようやく、うとうとし始めたとき、部屋の中の雰囲気がざらりと重たくなりました。 これは言葉でうまく説明できませんが、このいやな感じがくると私はたいてい金縛りにくるしめられるのです。 たちまち体が重たくなり、私は目だけ動かせる状態になってしまいました。 「あー、きた」 と、私は多少の恐怖と面倒臭ささを感じていました。 心の中で必死にお経を唱えましたが、いっこうに金縛りは解けません。 しかし、本当に怖かったのはこの後でした。 「…イ・ケ・ナ・イ・ヨ・ー、 イ・ケ・ナ・イ・ヨ・ー……」 あきらかに私の耳元で、男とも女とも区別しがたい声がします。 私は恐怖のあまり、早くこの金縛りが終わることを願っていました。 こんなにはっきりとした声が聞こえたのは始めてだったからです。 目をつむってしまいたいのにそれもできず、ふと人の気配がするのに気づきました。 …それはパジャマのような物を着て、部屋の隅にいました。 ぼんやりと影のように見えました。 1階に住んでいたので、私の部屋のベランダに立つことは生きている人間なら可能だったでしょう。 ですが、生きている人間なら、ベランダの戸をすりぬけてくることは不可能なんです。 それからはっきりとした記憶はありません… いつのまにか眠ったのか気絶したのか…。 今は就職し、引っ越しをして別の市に一人暮らしをしています。 以後、大した体験もしていません。 あのアパートはいまでもあるみたいです。 震災の被害も免れ、いまでも救急病院のそばに… 後から思ったのですが、あの影が着ていたパジャマはその救急病院のものによく似ていました。 投稿者:NORIさん |
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